Orbital、自社法律事務所を設立しAI自動化を加速
- •Orbitalが自社製AI法務ソフトウェアを検証するため、専用法律事務所Farringdonを設立した。
- •専門の法務エンジニアを事務所に配置し、実際のワークフローデータを収集する。
- •従来のソフトウェアライセンス販売から、AIを活用したサービス提供モデル「NewMod」へ転換を図る。
法務分野におけるAI導入は、長らく「ドメインギャップ」という課題に直面してきた。ソフトウェア開発者は現場の弁護士が日常的に抱えるストレスや反復的な作業を深く理解しないままツールを構築しがちであり、実用性との乖離が問題視されていた。不動産テックを手掛けるOrbitalはこの壁を打破するため、独自の住宅不動産法律事務所Farringdonを設立する大胆な戦略に踏み切った。
同社は自社を開発環境であり、かつ最大のユーザーと位置づけることで、ソフトウェアが実社会の過酷な環境で機能することを担保している。これは単なる市場拡大ではなく、ソフトウェア開発とサービス提供を不可分なものとする「NewMod」戦略の要である。現場には弁護士と、業務のボトルネックを特定しコードに落とし込む「法務エンジニア」が混在している。
弁護士がAIエージェントの支援で権利証書の作成や不動産権原の確認を行うたびに、システムは最適化の材料となる貴重なデータを得る。この垂直統合的なアプローチにより、開発サイクルは外部からのフィードバックを待つ遅延から、内部で完結する高速な継続的改善ループへと変貌を遂げた。
こうした「AI対応サービス」の台頭は、法律、会計、建築といった労働集約型の専門職のあり方を根底から変える可能性がある。Orbitalのように開発側が自らの料理を自ら味わうことで、より現場に即した強固なAIソリューションが生み出されるだろう。
Farringdonの設立は、専門的なAIをいかに実務へ組み込むかの有力なモデルケースである。フロントエンドの法的業務とバックエンドのインフラを全方位で支配することで、純粋なソフトウェア企業が追随困難な競争優位性を築こうとしているのだ。法務という営み自体がデータ収集の実験場と化す今、AIはもはや単なる補助ツールを超え、サービスそのものへ直接埋め込まれる段階へと進んでいる。